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『武辺咄聞書』第16話〜第20話 『武辺咄聞書』第16話 16 天正十八年三月小田原御陣の時、尾張内府信雄公、駿河の三枚橋に御陣取被成。家康 公は長窪に御陣を取給ふ。三月廿八日秀吉公三枚橋に御着陣に付、御先手諸大将皆々浮 嶋か原迄御迎に被出。信雄公・家康公も同御出迎有る。太閤は糸緋威の御鎧、唐冠の御 甲、金の熨斗付御太刀二振、御帯金の大土俵空穂のうへに征矢一筋指是を付、作髭を御 掛被成、朱滋藤の弓を仙石権兵衛か進上仕候を御持被成、金の瓔珞の馬鎧掛たる七寸の 馬に召、余情をふるひ御通。御供の面々異類異形の出立也。千利休は金の茶筅付たる七 節のゑつるを指、樋口石見鼓の胴の差物狂言師番内は三番叟の装束也。其外様々の出立 也。秀吉公は信雄公・家康公御迎に御出候を御覧被成、何も高家、信雄公は御主筋なれ は御乗打如何思召、其上其比信雄公・家康公小田原御内通の雑説も有故、礼儀なから御 両人の御前にて秀吉公御馬よりひらりと御下り、太刀に手を掛給ひ「信雄・家康逆心と 承候。御立あがり候へ。一太刀参ふ」と被仰。信雄公は赤面して居給ひ、兔角の言葉な し。家康公は諸人に御向被成「御陣初めに御太刀に御手を懸られ、目出度御事候也。何 も目出度可存」と高らかに被仰。秀吉公御詞なく即馬に召、御通被成。見聞の諸軍勢、家 康公御智勇を不奉感はなし。
『武辺咄聞書』第17話 17 下総国庁南の城へ上杉定政被寄時、人数を夜押にする。其道に山涯山海端有り。塩満 る時は山涯を行に、山の上に石弩を張置、やゝもすれは人数損する。定政此方にて人数 を止め「件の路の汐の干たる時に山陰を除て遠干潟を可推。汐干たる」とて斥候を被遣 に、見切あしき故分明ならす。定政の家老太田資長入道道潅「我等参り見て参らん」と 乗出し、其所迄も不行乗戻し「塩は干申候間、人数押可申」と言。則人数推行に、汐干 て遠干潟を安々と推たり。定政道潅に向て「其所迄不参して汐干たる事を知事如何」と 問給ふ。道潅申て「古歌に、遠くなり近くなるをの浜ちとり声にそ汐の満干をはしる と申候か、ちとりの声遥に遠く聞へ候に付、汐の干たるを存候」と申けると也。
『武辺咄聞書』第18話 18 播州三木の城を秀吉公御攻被成時、城主別所小三郎長治か家人中村五郎忠滋と言者有。 秀吉公より谷大膳衛好を御使にて「別心して城へ秀吉の人数を引入は、一廉褒美可被下」 と有。中村同心して惣領娘を人質に出し、扨日取刻限迄定、秀吉の人数を千余城中へ引 込、跡先より引包、秀吉の人数を壱人も不残討果す。秀吉公立腹大方ならす、彼娘を磔 に掛給ふ。三木落城の後、中村五郎行衛なし。色々御尋、丹波の国綾部の奥山より搦出 す。秀吉公被仰出は「三木にて我を謀り、屈強の兵千余討取候所、足より刻ても飽なし。 火烙鋸引にもと思召候へ共、主君別所か為に最愛の娘を捨て忠節致たる事なれは、其志 |
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至て忠臣也」。中村式部少輔一氏か与力に御付被成、三千石被下。秀吉公の御裁判難有事 なりとそ。(栄直云、三木別所記委細の書なれども、此中村五郎か計策のこと無之、いか ん。)私云中村五郎娘を棄たる忠臣は尤也。此以後の仕形はいかん。
『武辺咄聞書』第19話 19 家康公出頭人本多佐渡守正信、智謀有る名士と御聞被成、秀吉公「御目見致させ可然」 と家康公へ御内意にて、江戸より被召登。其砌佐渡守伏見へ着、増田右衛門尉長盛方へ 見舞に行、夜更る迄語て帰る。増田是を送る。詰居たる侍共の前にて、佐渡守手燭持た る小姓の袖をひかへ、詰居たる増田か侍共を皆増田(本多)に目見へさせ「皆々御大儀」 と言て立帰る。諸人佐渡守を誉たり。其昔永禄七年二月家康公、参州土呂・針崎・野寺・ 佐崎の一向宗御退治の刻、佐渡守其比は本多弥八郎と号して一向宗方なりしか、没落し て上方へ奔、三好左京大夫義継方へ立寄り居る。松永弾正少弼久秀此者を見て「此人希 代の名士たるへし。只者にあらす」と誉たりとかや。
『武辺咄聞書』第20話 20 近代世に勝たる名士同名たるを揃て世上に是を称する。三駿河・三勘兵衛・両兵部と 云々。越後上杉謙信家老 宇佐美駿河守定行 三駿河 甲斐武田信玄内 加藤駿河守光員 是三人 安芸毛利輝元臣 吉川駿河守元春 石田治部少輔三成内 杉江勘兵衛 三勘兵衛 田中兵部少輔長政内 辻勘兵衛 是三人 藤堂和泉守高虎内 渡辺勘兵衛 毛利家臣 浦兵部丞宗勝 両兵部 徳川御家 井伊兵部少輔直政
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菊池真一 URL http://www.konan-wu.ac.jp/~kikuchi/ Eメール kikuchi@konan-wu.ac.jp 又は kikushin@kikuchi.dddd.ne.jp
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