大衆講談全集内容見本

発行年不明(昭和初期)




《表紙》

大衆講談全集
(タイトルの右側に)啓發社出版・豫約募集
(タイトルの左側に)特製一冊壹圓・全十八卷
(表紙左下側に)申込所
(ゴム印赤色)名古屋市中區新栄町三丁目三十三番地
書籍雑誌文房具商 江崎正文堂
電話東局六〇八六番
振替名古屋三七二四番

《見返し》

あらゆる全集中
第一の美本!!
第一の廉價!!

英國製總クロース、
金模様、燦爛たる美
本です。他刊行會本
より一割も安い
(見本写真下側に)實物縮寫

《1ページ目》
(上側に)われ等の日本を産んだ我等の講談
これは現代日本を産んだ江戸文化の、鮮かな繪卷物であり、日本文化史である。既刊の古い小説や、飜譯物を集めた駄小説集ではなく、全部二十六大家が特に本社のために新たに口演された名作揃ひである。
日本の文明は、その端を江戸文化に發してゐるとしたら、江戸文化の精華であるこの大衆講談全集は我が國民必讀の文化史といふも敢て過言ではあるまい。隨て本書を讀むことは吾等の義務であり、それが亦た大なる誇りであらねばならぬ
《2ページ目》
大衆講談全集の五大特色
◎どこを読んでも面白い
讀み出したらそれこそ止められぬ
 近頃、次から次へと色々な全集が出版されますが、併しその多くは黴のはえた古本の寄集めもので、新作は殆どありませぬ。切角新聞廣告に釣られて買つて讀んで見ても、元來古本屋の店頭や上野廣小路あたりの夜店などで廿銭五十銭位で捨賣してゐる安本を九ポイント活字や八ポイント活字に組直したものであり、それに譬へ著者が異つても小説の筋が同じであるから、面白い道理がありませんが、かうした駄小説の全集と異なりわが大衆講談全集は全部 本當に全部 現講談界の二十六大家が、大衆讀物として今回特に本社のために口演された十八番物を、斯界の大家今村信雄先生が、華かな筆で速記されたもので面白い上に文辭すこぶる華麗でありますから、他の全集に數段まさるとも、絶對に劣るやうなものではありませぬ。

《3ページ目》

◎お芝居見物にも映畫見物にも
本書は無二の御案内書
御承知の通り、日本の芝居も映畫も寄席も全部その材料は講談から出てゐるのでありますから、皆様が芝居や映畫を御見物になり、それを能く御理解になるには奈何しても本社發行の大衆講談全集をお讀みになる必要があります。その種子本である大衆講談全集を讀まずして芝居を御覧になり、映畫を御見物あそばしても、到底それを理解することは出來るものではありませぬ。それに大衆講談全集は從來の舊式な講談とちがひまして、何處を讀んでも面白く、一度讀み出したら、とても止められぬほど面白く、家庭讀物として既に定評のあるもので、日本の新聞で毎日講談を掲載せぬ新聞がないほど、家庭の唯一無二の好讀物であります。

《4ページ目》

◎本書は一流寄席の延長であり
廉價無比の放送(ラヂオ)であります
 我々日本人は誰方も先天的に銭湯と寄席を好み、こゝで垢を流し、講談をきいて、心からのび/\と生命の洗濯をするのが昔からの習慣でありますが、大衆講談全集は二十六大家が今回特に本社のために新たに熱演された名講談でありまして、本來なら東京でも第一流の寄席で而も一夜一圓乃至五十銭位の木戸銭を拂はぬと聽くことの出來ない口演者の十八番物で御座いますから、地方の刊行物に毎日連載されてゐる講談とは、同じく講談でも第一格が違ひます。この意味から申してもこの全集は讀者に對し、東京一流寄席の公開であり、世界無比の廉價な放送であります。

《5ページ目》

◎旅行の際にはその好伴侶となり
徒然には家庭の慰安となる
 學術的な専門書籍は別として、家庭の讀物としても、旅行中の讀物としても大衆講談全集が一番適當な讀物であることは異論のない所であります。日本の人口約八千萬中、讀書階級をその五割といたしましても約四千萬人中、講談を讀まぬ人は果して幾人あるでせうか、讀まぬ人は恐らくあるまいと思ひます。この意味に於て本全集は國民思想の源泉であり、血液であり、滋養物であると斷言することが出來ます。面白くて、教育になる本全集は、安くて而もウマくて滋養になる御馳走を食べると同じことでありますから一舉兩得の讀物であるといふことが出來ます。

《6ページ目》

◎御覧なさいあとから出る全集ほど
立派で安くて而も本當に面白い
一度圓本が流行り出してから、今日で幾種の全集が出版されたであらうか。併しこれを公平な立場から見まするに、後から出る全集ほど、装幀も、製本も、印刷も、組方も、綴方も、紙函も、用紙も、金版も段々改良されて、次第に立派に、堅牢に、華奢になつて來たことは爭はれませぬ。この點に於て大衆講談全集はあらゆる全集と比較して數段群を抜き、製本には英國製クロースを用ひ、金箔の如きは土箔を印刷したものではなく何れも彫刻した金版で純金の極上箔を押してありますから、數年たつても色の褪めるやうなことはなく、殊に製本はドイツ式の機械綴じを採用してありますから絶對にバラ/\になるやうなことはすありませぬ。それに本書は新鋳の九ポイント組みで、總振假名づきでありますから、假名の讀める方なら、誰方でもすら/\と讀むことが出來ます。實に本書は御退屈な時や御旅行の時などの心の糧であり、この上もない慰藉であります。

《7ページ目》

大衆講談全集
全拾八卷二十六大家熱演の内容
第一卷 幡隨院長兵衛  神田伯山演
 徳川幕府の初期、江戸市中を横行闊歩して直参風を吹かせ、傍若無人の振舞をした旗本白柄組水野十郎左衛門の一派に對抗し、弱い町人の味方として活躍したものに、町奴幡隨院長兵衛の一味があります。昨日も今日もといふやうに、町奴と白柄組との間に衝突がありました。果は長兵衛が水野の奸計に陥て、同邸の湯殿で暗殺されるやうな事になり、夫が爲に遂に町奴は滅びましたが、其の代りには白柄組も共に倒れました。江戸の市民は始めて安堵の胸を撫で長兵衛の徳を慕つたのであります。何と云つても大江戸を代表する侠客は、幡隨院長兵衛の外にはありません。そして侠客物の講談師として、當代隨一の稱ある神田伯山氏が、特に熱辯を振つて下さる事は、當全集の誇りであります。猶同師が賣出しの讀物であり、且つ十八番物として名高い野狐三次をも加へて、全集の第一卷を飾る事となりました。

《8ページ目》

第二卷 赤穂義士全卷  寶井馬琴演
 我が國、國民の精華として、世界に誇るべき物語は何かと云へば、夫は赤穂義士傳であります。夫では日本の大衆讀物として、代表的の傑作は何かと云へば、夫も赤穂義士傳であると云ふ事が出來ませう。『忠孝仁義禮智信』は、實に我が國民の標語であります。僅々五六十年の間に、世界の強國となり得た事も、偏へに其の傳統的精神の賜のと云ふ事が出來ます。噫、赤穂義士傳!夫は我國民の通俗的教科書であります。如何なる家庭にも、此の面白くして有益なる教科書一冊は、是非供へ置かなければなりません。演者は斯界の元老寶井馬琴師、本傳より銘々傳まで凡そ千五百餘枚、其の全部を只一冊の内に輯めるといふ事は、此の全集に依て始めて爲し得る事であります。
第三卷 天保六花撰  錦城齋典山演
 大江戸の全盛は天保年度を以て事實上終つてをります。例へば蝋燭の灯の消えなんとする際の、刹那的の明るさであります。頽癈しきつた江戸人士の華奢は、殆ど極度に達し、遂には名代の大改革さへ行はれるに至つたのでありますが、當時惡名の高かつた御本丸の坊主河内山宗俊といふ徒者を中心に、御家人直侍事片岡直次郎、博徒暗闇の丑松、ピン小僧金市事劍客金子市之丞、海賊森田の清藏、吉原の遊女三千歳等を配して、情味纏綿たる状景を寫したものが、此の天保六花撰でありますが、啻に人情の機微を穿つてゐるといふのみならず、時代風俗史の一端として見るも面白く、且つ有爲であると信じます。演者は斯界の重鎮錦城齋典山師、猶此の外に天明白浪傳を添へます。之は又因幡小僧、神道徳次郎等の悪漢の物語を綴りしものにして、波瀾重畳、興味津々たる讀物。

《九ページ目》

第四卷 敵討伊賀越  一龍齋貞山演
 舅の敵たる河合又五郎一人を討取るのなら、柳生流の名人荒木又右衛門としては實に鶏卵を潰すより容易な仕事でありました。併し時には、旗本八萬騎より特に選定された一流の武藝者三十餘名が附添つてゐて、迂闊には近寄れません。荒木の苦心は其處にありました。併し時は來つて孝子、義士の辛苦は遂に報ひられたのでした。伊賀の上野金殿寺門前の三十六番斬、おゝ、その鬼神の如き働き、全身返り血に染りながら、本懐の歡喜に跳躍する勇ましき武者振よ。演者は講談界の驍將一龍齋貞山師、讀物は同派相傳の家の藝。
第五卷 幕末名士傳  猫遊軒伯知演
 講談界の新物語として聞えたる猫遊軒伯知師には、幕末維新の名士傳をお願ひしました。斯界隨一の讀書家にして新作を多く手がけられてゐる同師の事とて、必らず愛讀者諸君に御滿足をして頂くやうなお作を見せて下さる事と信じます。今から充分御期待下さい。
第六卷 大岡名政談  悟道軒圓玉演
 讀物講談の大家悟道軒圓玉師は定めし諸君もお馴染深い事と存じます。演題は大岡名政談としてお願ひしましたが、扨どういふ物をやつて下さるかは暫らくの間、天機洩すべからずとして置きます。

《10ページ目》

第七卷 太閤記全卷  旭堂南陵演
 尾張中村の農民から出て、一代に布衣の極たる關白にまで栄達した大傑物豊臣秀吉の一代記は、其の土地柄にも縁の深い大阪の旭堂南陵師にお願ひしました。同師は太閤記を最も得意とされるだけに其の事實調査に就ても非常に熱心で、態々其の關係ある方面へ出張されては研究をなすつてゐるといふ事です。隨つて輕い讀物として樂んで宜く、史實として愛讀さるも又可なりといふ次第です。之れ又切に御期待を願ひます。
第八卷 岩見重太郎  田邊南龍演
 天の橋立千人斬、之こそ劍劇物の總本家、人間放れのした其の強さ、痛快!壮絶!面白い事は受合です。加ふるに演者は之を十八番中の最得意とする田邊南龍師、全集の爲に特に大熱演。一度繙けば千百頁何のものかは途中で止められないといふので苦情が出なければ宜いが……。
第九卷 加賀騒動  桃川如燕演
 如燕師は桃川派の頭領にして人格者です。今回本全集のために演じられる加賀騒動は特に珍しい材料で、差かへて熱演して下さる筈で御座います。

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第十卷 夕立勘五郎 善惡二人娘  神田ろ山 神田山陽 演
 松平出羽守の元締伊賀屋勘五郎、夕立といふ荒馬を撲殺した事が評判になつて、通稱夕立の勘五郎といふのです。早く云へば幡隨院長兵衛の二代目のやうな人物。此の講談の特長と思はれる事は、舊講談が多く逃げる方を主人公にしてゐるに反して、探偵を主人公にしてゐる事であります。又善惡二人娘は、一腹一時の姉妹でありながら、一方は善人に、一方は惡人になり、一人の孝子を中心にして姉妹が知らず/\の内に敵同士となる事です。時代は幕末、ろ山、山陽、兩師とも伯山門下の新人で、共に斯界の花形。此の處兄弟大競演です。
第十一卷 日蓮記全卷 祐天吉松  柴田南玉 神田伯治 演
 日蓮記は柴田南玉師の家の物で、之また代々相傳にされてをります。祐天吉松は江戸の侠客ですが、此位數奇の運命を持つて生れた者は他に一寸あるまいと思はれます。南玉師も伯治師も之また共に伯山師門下の俊才です。
第十二卷 軍談川中島 慶安太平記  桃川桂玉 放牛舎桃林 演

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 桂玉師の川中島は斯界に於ても評判の讀物です。川中島界隈を實地踏査して研究した上改竄されたといふ事です。桃林師の材料は他派のものと幾分づゝ違つてゐるのを常としてゐます。今度の慶安太平記も必らずお目新しい筋を發見なさるに違ひありません。これ亦大いに御期待を願ひます。
第十三卷 近世侠客傳 檜山事件  伊東陵湖 寶井琴窓 演
 近世侠客傳といふ廣い題では、今の處豫測が出來ませんが、大方國定忠次や大前田の英五郎や、小金井の小次郎や其の他種々の侠客が顔を出すに違ひありません。陵潮師は材料を多く持つてゐられる方ですからどんな珍らしい種を持出すかも知れませんし、夫を又どういう風に扱ふかも興味ある問題です。檜山を境にしての領分爭ひ、盛岡の藩士相馬大作が、主家の怨みを晴さうとて、津輕家代々の太守に危害を加へる、其の苦心艱難演者琴窓師得意の讀物。
第十四卷 天下の彦左衛門 水戸黄門  邑井貞吉 神田松鯉 演
 天下の御意見番、無役無席、殿中頭巾御免我儘勝手次第といふ肩書附の大久保彦左衛門老人の傳記、抑も十六歳の總角、鳶の巣、文珠山の幼陣から、其の生涯に於る忠義の數々、奇行の様々、一つ残さず纒めようといふ邑井貞吉師の大奮發、大勉強。『たゞ見れば何の苦もなき水鳥の足にひまなき我が思ひかな』と、嘆ぜられた水戸光圀も、天下の副将軍を辭せられて西山へ隱居の後は氣安い身の上、近臣兩名を供に連れ諸國漫遊、其の道中記の奇行、失敗の續出。滑稽味を澤山に持合せる神田松鯉師にはお誂へ向の語物、是ばかりはどうか笑はずに讀で頂き度い。
第十五卷 徳川栄華物語 宮本武藏  昇龍齋貞丈 太田貞水 演
 我が講談全集の棹尾を飾るものは貞丈師の徳川栄華物語であります。之は徳川十五代の間の主に営中の事を語るもので、千代田大奥の秘事、怪事は定めし讀者の驚嘆に價するものがあらうと思ひます。演者貞丈師は典山師門下の俊才にして斯界の花形、充分此の大物を演出するの技倆ある事を信じます。貞水師も斯界の新人、その新しい演出ぶりに依て、必ずや讀者諸君の好評を頂くに相違ありません。
第十六卷 妖刀籠釣瓶 紀文大盡  神田伯龍 西尾麟慶 演
 若手の内でも屈指の端物讀み、神田伯龍の籠釣瓶は十八番物として自他共に許してゐるものです。妖刀村正の祟に依て次から次へと纒はる因縁、遂には上州の絹商人佐野次郎左衛門が、吉原へ血の雨を降らすに至る物語り。猶笠森おせんの一篇を添へます。一代に百萬兩の身上を作り上げたといふ成金の親玉紀文大盡の景氣の好い物語。麟慶師の十八番物であります。
《14ページ目》

第十七卷 日本三馬術 梁川劍侠傳  大島伯鶴 桃川若燕 演
 三馬術と云へば伯鶴、伯鶴と云へば三馬術といふ位のお得意物、曲垣平九郎が愛宕山の石段を馬で上下して、將軍家のお褒めに預り、日本隨一の額を掲げるといふのが発端、夫から如何なる事件が起るか、斯界の鬪將伯鶴師の雄辯に依て説き出されたものこそ、軈て讀者諸君を魅惑する事でありませう。『仙臺破牢の罪人梁川庄八正國』と宿屋の門口へ建札を出させる●人、義の一字を重じ、己が身命を鴻毛の如くに輕んずる快傑桃川若燕師の能辯、庄八の面目を躍如たらしむるでありませう。
第十八卷 寛永大試合  寶井琴陵演
 三代將軍家光の時、日本國中より一流の武藝者を呼集めて、吹上の園上で大試合を催しました。行司は柳生飛騨守小野次郎右衛門、會する處の名人上手が、火の出るやうな大試合、さて其の勝負は琴陵師の名講、讀者諸君をして血湧き肉躍る思いひあらしめることは太鼓判を捺して保證いたします。
以上十八卷を一年半の短期間に配本申上げます。

《15ページ目》

組方見本
長兵衛が休息をしてゐると、奥の方では、ゴタ/\何か騒いでゐる様子だ。暫く經つと、十郎左衛門の家來が一人夫へ出て來た。
「長兵衛、今折よく同勤の方々が大勢お出でなされて、長兵衛の上方張を聞きたいと仰しやるし、お目通りをするやう、夫に就て風呂をたつて置たに依て、天下のお旗本の前へ出るのだから、身體を浄くして參れよ」
「畏まりました」
 どうせモウ長兵衛は殺される氣だから、生てゐる内に湯灌をしやうといふ了簡で、案内に從つて風呂場へ參りました。
スルと、小桶が一つもない。向ふに水風呂があつて、外に何にもない。夫で長兵衛が、ハツと胸に浮んだ。
「ハヽア、夫ぢやア卑怯未練の旗本輩、乃公を裸體にして、身に寸鐵も帶ないやうにして置て、殺さうといふ了簡だらう、宜し/\」
と、着物を脱いで、風呂へ入らうとすると、

《16ページ目》

組方見本
「コレ/\長兵衛、下帶を取らんか」
「ヘイ、私はお湯へ入りますのに、下帶は取りません、どうせ後はお捨てになるんでございますから此の儘頂戴を致します」
「アヽさうか、夫ぢや宜しい」
 長兵衛は其儘中に入つて、頻りに首の廻りの垢を落してゐる處へ、バラ/\/\と多人數の足音ヒヨイツと振返つて見ると、水野十郎左衛門、諏訪藤右衛門、近藤登之助、加賀爪新十郎、長坂血槍九郎、各々槍薙刀を押取つて一文字に列ぶ。其の後の處に金時金兵衛、渡邊綱右衛門、季武の竹右衛門奴の九郎兵衛、市兵衛等八九人、後鉢巻、襷十字に綾取つて控へてゐる。長兵衛首の廻りを洗つて居たが、仰々しい事だと思ひながら、
「之は/\皆々様大層お揃ひで」
「長兵衛、今日は能く來て呉れた、十郎左衛門の心を喜ばして呉れて忝じけない、熱ければ水を廻してやるし、微湯ければ湯を廻してやらう」
「有難う存じます、少々お湯を頂きたいもので、微温うなりましたから」

《裏見返し》

家庭の平和を保つには
衣食住・財産・講談
●本全集は現代一粒選りの名人大家が今回特に本會のために得意の題目を選んで精練至妙の『家の藝』を競演されたものであるから、所謂市中にごろ/\してゐる青二才の書いた大衆物とはその選を異にし、實に天下の壮觀也。
●是こそ眞の大衆藝術にして、而も一言一句抜き差しならぬ洗練琢磨の金玉文字。そんじよそこらの青臭い大衆文學と同一視すべからず。
●本全集現はれて、讀書界到所の渇望、初めて充さる。深く國民性に根ざせる物語の寶庫は即ち是れ。
●當然出づべくして出でざりしは何故か?斯界の精鋭大幹部を斯くも揃へる事の至難なるが爲也。今回本全集に於て、其の難關は見事に突破され、茲に燦然たる讀物の寶庫は、漸く開放さる。
●日本全戸數一千百萬、一家庭に一本!是れ本全集の光栄あるモツトー也!
●天下唯一の大讀物全集。
●圓本戰場に出でざるべからずとして江湖が待構へてゐた全集。
國家的思想の根元、世態人情の眞味、大衆の讀物として是れ以外にない全集。
●大江戸時代より現代まで、銑錬又銑錬、通俗藝術の妙を極めた全集。
●一家に一本、圓滿和樂の材となり、知らず興味の中に子弟の教育となる全集。
●文藝に對する講談、やさしく面白く、子女にも容易に軍記歴史を教へる講談、無敵の全集。
●武に強き日本、義に強き日本、情に美しき日本、其を何が生んだ、講談が生んだ、思想記念の此全集。
●この全集は衣食住や財産と同じやうに、人間生活の一部分で、講談のない家庭はその平和を保てない。
●本全集は劇場と活動寫眞と寄席の民衆化であり、放送である。

《裏表紙》

大衆講談全集豫約規定
一、頒布方法 全部十八卷。豫約會員にのみ頒つもので、一冊賣りは致しません。
一、刊行期日 本年五月第一卷發行、以後毎月一冊づゝ發行します。
       但し配本は必ずしも卷數の順序によりませぬ。
一、體裁 四六判極上等舶來のクロース金模様、特別上製、一冊紙數七百頁以上一千頁。九ポイント組、總ルビー附紙函入。
一、入會申込 御入會の際申込金壹圓御送り下さい。これは最後の月の會費にあてます、最初の月の會費は別に御拂込みを願ひます。申込金は中途解約の方へは返金しませぬ。
一、會費 毎月拂、一冊につき壹圓
     十八冊(前拂)、十七圓。(全額前拂は申込金を要しませぬ。)
     別に郵送料として一冊拾八銭(東京市内六銭海外卅二銭)を申受けます。
一、拂込方法 振替貯金又は爲替でその前の月の末日までに着金するよう御拂込み下さい。但し郵券代用は一割増のこと。

五月三十一日締切 第一回配本は五月中旬出來申込順によりお渡しゝます

(下側に)
東京市本郷區駒込浅嘉町振替東京五二一〇〇番
啓發社
電話小石川一二九〇番

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菊池真一 mailto:kikuchi@konan-wu.ac.jp or kikushin@kikuchi.dddd.ne.jp