It’s Precious Moment. — 輝き続ける卒業生を清友会がレポート —

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戦後の混乱のなか、「お母さんの気持ち」が日本中のベビー・子ども用品を変えていった。

画像:坂野惇子氏(ファミリアさま公式サイトより)

坂野惇子(ばんの あつこ)氏

1918(大正7)年生まれ、1936(昭和11)年 甲南高等女学校卒業、1979(昭和54)~1984(昭和59)年 甲南女子学園 評議員、2005(平成17)年 逝去 享年87歳

甲南女子中学校・高等学校生徒の通学を優しく見守るデニムバッグ。

赤や紺のデニム地に独特の愛くるしいアップリケ。神戸や阪神間の女子中高生に圧倒的な支持を受けるデニムバッグをご存じの方は少なくないでしょう。甲南女子中学校・高等学校においても、補助バッグに指定しているこのバッグ。どこか懐かしさを感じさせる意匠は、神戸に本社を構えるベビー・子ども用品メーカー、株式会社ファミリアが、1957(昭和32)年にはじめて発売して以来、現在に至るまで愛され続けているロングセラー商品なのです。

ファミリアを創ったのは4人の女性。その中心にいた私たちの大先輩、甲南高等女学校の卒業生である坂野惇子さんは、従来からの習慣や観念のまま作られていたベビー・育児用品に、自らの育児体験をもとに、外国の合理的かつ理知的な新しい育児法を取り入れた人物です。

画像:デニムバッグ変遷(1999年、2010年、2015年)

日本中のお母さんから愛されるブランドのはじまりは、甲南高等女学校の級友たちの勇気。

育児を経験した女性であれば、知らない人はいないであろうファミリアは、戦後の混乱のなか、産声をあげました。明日の生活もままならないご時世、これからは女性も働かなければならないと考えた坂野さんは、甲南高等女学校時代の級友 田村枝津子さんを含む女性4人で手探りのなか、手芸品の販売をはじめました。娘時代より親交のあった三宮センター街のモトヤ靴店の好意で、提供してもらった2つの陳列ケースに商品を並べ、ファミリアの前身、ベビーショップ・モトヤはスタート。それは1948(昭和23)年、年の瀬でした。

画像:坂野さんたち

「同じ仕事をするなら、単なる手芸店ではなく、女性の特徴を生かし、せっかく覚えた新しい育児経験をもとに、あかちゃんや子どものためのかわいい良いものを作って売ればどうかしら」と考えた坂野さんたちは、それまでの日本のベビー衣料品にはない、新しい発想にもとづき良心的で感覚の良いベビー・子ども用品を作りはじめたのです。“すべては子どものために”、“自分の子どもに着せるつもりでお洋服を作りましょう”という理念でつくられた坂野さんたちの商品は、粗悪品が横行するなか、刺しゅう糸や生地にしても外国の超一級品を用い洗っても色落ちせず、世間のお母さんから受け入れられるのに、そう時間はかかりませんでした。

その後、順調に業績を伸ばしたベビーショップ・モトヤは、1950(昭和25)年、法人化し株式会社ファミリアに。当時としてはハイカラなこの社名は、子どもと母親に向く“家族的な”という意味をもつ社名はどうだろうと考えていた坂野さんが、偶然会ったフランス人に質問し、家族という意味を持つことから名付けられたものです。

自由な校風で育まれた先進的な思考を生きる知恵に変え、女性の能力をのびのびと発揮する。

画像:ファミリアさま公式サイトより

「何の苦労も知らなかった深窓の令嬢たちが、敗戦での境遇の激変に却ってふるい立ち、この変転きわまりない時代を、一致協力して勇猛果敢に生き抜いたこと」、「坂野道夫社長のもと女性の能力をのびのびと発揮させた」と、当時、株式会社レナウン理事長であった尾上清氏は、坂野さんをはじめとした4人の偉業を讃えました。彼女たちが勇猛果敢に立ち振る舞えた理由は、青春時代を過ごした環境にもあるようにも思えます。

戦乱のなか決して華やかな時代ではなかったが、後に坂野さんは、「表校長先生(当時)の自学自習の教育方針は新しく」、「心温かい級友に恵まれて、楽しく青春を謳歌することができた」と、甲南女子学園創立70年誌に寄せています。当時、甲南はお嬢様学校と言われていたが、新しい教育方針である自学自習をいち早く取り入れた環境の下に、坂野さんは豊かな青春時代を過ごしました。そして卒業後も先進的な思考を生きる知恵に変え、ともに困難を乗り越えられる厚い友誼を育むことができたのでしょう。

「坂野さんからは『自分の子どもに作ってあげる気持ちでつくりなさい』と絶えず言われました」と語る藤井もみさん。約45年もの長い間デニムバッグのデザインに携わっていました。ロングセラーであるファミリアのデニムバッグは、手芸とデザインが一体になった、まさに「お母さんの気持ち」の集結で、すべてを手作りに担っています。アップリケで表される女の子やクマちゃんやワンちゃんは視線が合っていて、その会話を想像しながら針が刺されるのだという。いつの時代も女子中高生の心をつかんだ、あの可愛さや温かさは、製作過程においても紡がれているのでしょう。

“すべては子どものために”
“自分の子どもに着せるつもりでお洋服を作りましょう”
坂野惇子さんをはじめとした4人の思いは、より良いベビー・子ども用品を追求する真理となり、あかちゃん、お母さん、家族のために、を考えるファミリアに深く根付いているようです。

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