2019年7月11日、<第52回クリエーターズフォーラム>を開催いたしました。
今回のゲスト藤岡亜弥氏
広島生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。2008年新進芸術家海外研修員(文化庁)としてニューヨークに滞在。2012年帰国後広島を拠点に活動。主な写真集に「さよならを教えて」「私は眠らない」「川はゆく」などがある。2010年「私は眠らない」で日本写真協会新人賞。2018年には、広島をテーマにした作品「川はゆく」で、16年伊奈信男賞、17年林忠彦賞、木村伊兵衛写真賞を受賞。サンフランシスコ現代美術館に作品が収蔵されている。
まず紹介頂いた写真集は「My life as a dog」
少し寂し気な子どもの姿が切り取られている写真集は
藤岡氏が学生時代に撮影したもの。
最近出版された写真集の中にも子どもが多く出てきますが
学生時代のこのスタイルが今になっても染みついているそうです。
卒業後、2年間のOL生活を送り、旅行先の台湾へそのまま移住。
多種多様な文化、人間に触れ合ううちに
「自分の知らない世界を知りたい」という気持ちが強くなり、
ヨーロッパへ放浪の旅へ出ます。
「楽しい旅ではありませんでした。ヒッチハイクし、民家に泊めてもらい、
家事を手伝いながら屋根裏に住まわせてもらったこともありました。
色んな経験をしましたが、日本に帰ってきてふと気づいたんです。
今の自分にはなにもない。
ただあったのは、旅の中で撮影した写真だけだったんです。」
写真を見返すと写りこんでいる全てが愛おしく感じ、
これをちゃんとまとめようと出版されたのが写真集「さよならを教えて」。
その後8年間OL生活を送られますが、
その間も写真家という意識なく撮り続けました。
そんな時、ふと生まれ育った街や家族に自分の知らない部分を見たそうです。
自分との間に溝を感じ取り、それをすくい取って作品にしたのが
写真集「私は眠らない。」
「この写真集を作成している時に気付いたんです。
私、手が好きなんだって。
外の世界に関心を持ちながら、自分の内を表現していく。
その差が今までのどのような経験をしてきたかで違ってきます。
自分のことに、ある時気づく。そこが大切なんです。」
最後に、今回のポスターのメインビジュアルの
女子高生達の写真が収録されている「川はゆく。」について
お話を伺いました。
広島を撮影することにしたのはいいけれど、
最初はどうしても「被ばくした街」をなぞってしまう。
しかしそれは自分が撮影する必要があるのかと疑問を持ち、
そこから「自分の生活の中の広島を撮影しよう。私と広島の関係を撮ろう」
と決めたそうです。
その中で撮影した1枚が、今回のポスターのメインビジュアル。
彼女たちは決して「広島だから」というわけではなく、
旅行先でいつもこんな風に撮影をして楽しんでいたそうです。
「写真というものを皆さんは「見るもの」と思っているかもしれません。
でも写真は「読むもの」なんです。
この女子高生の写真には賛否両論あります。
彼女たちに悪気はないんです。川を挟んで向こうに歴史があり、
こちらに現代を生きる女子高生がいる。
無邪気な今との対比でより歴史が目立つ写真なんです。」
今回、藤岡氏の写真を拝見し、
広島へ行きたくなったのは私だけではないはずです。
色んな思い、時間が交錯する街。
その魅力を私たちに伝えたのは藤岡氏の写真です。
写真の読み方を教えてくださり、ありがとうございました。
(メディア表現学科コモンルーム スタッフ)