甲南女子大学 ブログコレクション

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学科日誌 生活環境学科

上方の衣食住文化の過去・本質とこれから

こんにちは
本日は10月2日に行われた
講演会の様子をご紹介します

今回は大阪ガスのエネルギー・文化研究所の顧問で
いらっしゃいます池永寛明氏をお迎えし、
「上方の衣食住文化の過去・本質とこれから」を
テーマにお話を伺いました

上方から失われていく言葉の中に、
“なんで、あんたみたいな賢い子がこんなあほなことしたん?”と
いうような言い方があります。
ストレートにきついことは言わない
上方の文化がそこにあります。
これは貿易の都市、大阪・神戸ゆえの文化と言えます。
江戸時代、大阪の寺子屋には「あやまり役」がいて、
何かあればその日のあやまり役が謝り、
その子をダイレクトには叱らない、
町全体で人を育てる風土があったそうです。

しかし、現代ではプライバシーなどが重視され、
昔は根掘り葉掘り話せたことでも
聞き出せなくなり、
周りの人たちの事がよく分からなくなりました。
これらは昔が正しく、
現代が間違っているということではありません。

ただ、昔にあった事柄(コンテンツ)の中から、
なぜそうだったのかという背景(コンテクスト)を探り、
現代に活かす本質をつかめることが重要です。

現在、中国では
1000年前の清少納言の「枕草子」が
知識層・若者層でブームとなっています。
これは、漢・唐文化を知悉した
聡明・利発・前向きな日本人女性の感覚や、
清少納言の「をかし」の感性に
感動や共感を覚えたからとされています。

また、漢詩や唐詩を用いているため、
自らの中国古典を読むように、
心に入りやすいそうです。

中国人の92%を占める漢民族にとって
最高の時代と言われているのが
唐の時代と言われており、
中国からの観光客によると
「奈良や大阪、京都の古い町の
佇まいに唐の長安が浮かぶと」の
声もあるそうです。

このように、インバウンドの急増は
爆買い目的だけでなく、
日本へ唐の面影を求めていると
言われています。
私たちは中国の方々の気持ちへ
寄り添えているのでしょうか。

また、中国だけでなく世界中の人々が
「日本的なるもの」を感じるために上方へ足を運びます。
海外の方に、上方の印象について尋ねると、
「smart」(スマート)「manners」(マナー)を
感じるのだそうです。
特に、この「smart」(スマート)は
十中八句で出てくるワードなのだそうです。
この際の「smart」(スマート)とは、洗練さを指します。

現在、大阪市中央区が
「訪れるべき地域世界ランキング1位」となりました。
江戸時代の大坂も、
日本有数の観光都市でありました。
大坂は、商いに食を取りこんでいたとされていて、
商談がまとまれば、
茶屋や料理店で飲食を共にしていたのだそうです。

大坂料理の本質は「出会いもの」とされていて
海、川、山、野のものが季節ごとに大坂で出会い、
それぞれの良さを引き立てていたと言われています。
出しの配合も季節や水、その人の体調によって
比率を変えていたそうです。

そんな大阪が、昨年、
世界の「住みたい都市」3位に入りました。
世界で住みたい都市には、
旧と新が混じり合っているという共通点が
あると言われています。
中でも大阪は世代や時間、自然や人工が
絶妙なバランスに配置され、混じり合っています。

文化の本質は繰り返すことであり、
95%を過去から継承し、
新たなことを5%加えて進化させ、
洗練し続けていかなければなりません。

皆さんも上方の風土に触れることで
五感を研ぎ澄まし、
これからの都市、住まい、暮らし、ビジネスを
洗練し続けていって下さい

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