人間科学部のニュース
【表彰情報】星野先生(心理学科)と水野先生(メディア表現学科)の共同研究論文が 芸術科学会にて優秀論文賞に選ばれました
- 2025.12.11
- 教員・学生の活動

文学部メディア表現学科 教授 水野勝仁先生 心理学部心理学科 准教授 星野貴俊先生
の共同研究論文が 芸術科学会にて優秀論文賞に選ばれました。
①NICOGRAPH 2025の概要
NICOGRAPHは、芸術科学会(The Society for Art & Science)が主催する年次学術集会です。当学会の活動趣旨は「芸術と科学の融合領域」での研究・制作を促進し、デジタルアート、CG、メディア表現など多様な表現形式と科学技術を横断することにあります。NICOGRAPH2025は、11月30日から12月2日の3日間、県立広島大学 サテライトキャンパスひろしまで開催されました。学会趣旨を具現化する場として、学術研究の発表に加えて作品展示や実物のデモンストレーション会場も設けられ、研究者、クリエイター、学生、企業など多様な背景をもつ参加者が集い、芸術と科学技術をつなぐ新しい表現や技術、共同研究やコラボレーションの可能性を広げる貴重なプラットフォームとなりました。
②論文の内容、簡単な概要
アート・ユニット、エキソニモはデジタル・ディスプレイを用いて「不思議な視覚効果」を生み出す《Body Paint》を制作した。作品を批評した水野勝仁は、映像の「光」が絵具という「モノ」に擬態し、鑑賞者の「認識のバグ」を引き起こすと作品を評した。本研究は、《Body Paint》がもつ不思議なリアリティの正体を、認知科学の手法で実証的に探求することを目的として、作品から知覚される仮想的な立体感(あるいはディスプレイから飛び出してそこにいるかのような臨場感)を心理物理学的に測定した。その結果、作品から生じる立体感は、映像人物の微細な動きを前提として、塗装の明度が高いほど強くなることが示された。これは、映像の「光」と絵具の「モノ」の物理的特性が近いほど「認識のバグ」が強まるという批評的直観を裏付ける。本研究は、アート・批評・認知科学を架橋し、現代における「リアリティ」認知の解明に貢献する取り組みである。
③受賞コメント
水野先生
この研究は、2016年に《Body Paint》を批評したとき、「映像の光がモノに擬態している」と書きながらも、なぜそう感じるのかを説明しきれなかった問いに立ち戻る機会となりました。批評の言葉は直観を掬い上げることはできても、その正体を実証的に示すことはできません。
共同著者の星野先生(心理学科)と学生の皆さんが、心理物理学という異なる言語でその直観を検証してくれたことで、「認識のバグ」という曖昧な表現に輪郭が与えられました。また、実験用に作品のカラーバリエーション制作を快く許可してくださったエキソニモのお二人には、作品を「開いて」くださったことに深く感謝しています。アートと批評と科学が手を組むことで、一人では辿り着けない場所に連れて行ってもらえた——そんな研究でした。
星野先生
この研究は、共同著者の水野先生(メディア表現学科)が、作品のクリエイターと「なぜこの(映像の)人物はそこにいるように感じるのだろう」という疑問を共有したことが出発点になっています。この疑問の探究のために、ゼミで指導する心理学の学生たちと議論を重ね、最終的に知覚(立体感の強さ)と感性(作品印象)の両面からアプローチすることになりました。心理実験に用いた作品のカラーバリエーション制作も、計測もデータ分析も彼女らの貢献に依るところが大きいといえます。
研究者としても、実際のアート作品を実験に使わせていただける機会は相当に貴重なもので、ご許可いただいたクリエイターのお二人の懐の大きさと、作品に手を加えようと構想(妄想)を広げる学生たちの大胆さに、驚きとともに改めて感謝を申し上げます。
【ご参考】NICOGRAPH 2025 Webサイト
https://www.art-science.org/nicograph/nico2025/index.html#news













